量子応用工学研究室

量子アルゴリズムの制御理論への応用
 Control theory along quantum algorithm

量子回路とブロック線図 Quantum circuit and Block diagram

通常,量子アルゴリズムは左から右に流れる音楽の五線譜のような量子回路で書かれます.一方,従来の情報理論は,各操作を矢印でつなぐブロック線図として描かれます. 量子アルゴリズムを用いた制御理論は,量子回路で描かれますが,それでは従来の制御屋さんたちに理解してはもらえません.
この違いは,前者がエネルギー的に閉じた系内部での状態の遷移(アルゴリズム)を表現するのに対して, 後者では,開いた系における外部からの力による状態の遷移を表現することに起因します.

振動操作関数 Vibration manipulation function

  

そこで,当研究室では,閉じた系内部での量子アルゴリズムにおいて,系を駆動系(制御系)と被駆動系(被制御系)に分けることで, 被駆動系(被制御系)を開いた系として外力を出現させ,これにより量子アルゴリズムをブロック線図を用いて表現しています.
特に波動関数の振幅(エネルギー)を操作するGroverアルゴリズムに着目し,これを表現する三体衝突振動系を分けることで現れる入力関数**(外力)を 振動操作関数Vibration manipulation functionと名付け,駆動系(制御系)と被駆動系(被制御系)の間のエネルギー交換による 状態の任意の操作を実現しています.

有限時間整定サンプル値制御 or クローズループを伴った有限時間整定制御
Finite-time settling sampled-data control or Close-loop type finite-time settling control

こうして出来上がった制御は,連続時間制御的には,区分時間ごとに系を目的の状態にするフィードフォワード制御(有限時間整定制御)を 毎回区分時間ごとに修正することで得られるクローズループを伴った有限時間整定制御となります.
一方,離散時間制御的には,サンプル値制御において,ホールド関数を,従来の0次や1次関数のような単純なものではなく, 有限時間整定関数を用いた有限時間整定サンプル値制御とも理解できます.

量子と波動はつながっている Quantum and classical wave are the same

こうしてできた制御は,マクロな振動子に外力を加える従来の制御理論とあまり変わらない形に書けます.これはある意味不思議です. それは,古典的波動である振動の一つ一つのモードが,量子粒子であるフォノンのコヒーレントな集団運動であることと関係していると思われます. 結局,古典的な振動は,量子粒子であるフォノンと変わりなく,量子(波動)アルゴリズムが成り立つ存在なのです.
量子的な議論を除いて唯一の違いといえば,各操作を状態関数に演算子を掛けることで表されるこの制御は,必然的に有限時間ごとの整定制御となり, 無限時間後の安定性を議論する従来の制御理論とは異なる形式を持つこととなります. 量子力学というよりは,解析力学的な性質が表れてきたというべきかもしれません.

振動操作関数の応用 Application of vibration manipulation function

  

以下では,振動操作関数の応用として, 天井クレーン・倒立振り子・振り子の振り上げ制御,ロボットアームとフレキシブルアームの制御,歯車とベアリングの損傷解析, 衝突振動子のカオス制御,建物の制震・風揺れ制御,人工知能(ニューラルネットワーク)による機械制御, 非線形電気回路と無線電力伝送,自動車のアクティブサスペンション,カム曲線の開発, 自然発電への応用について説明します.

ニュートン力学と解析・量子力学